「今日は俺が作るわ」と、Koseが言った夜だった。
在宅で働いているMariは、日中のうちにキャンプで買って結局食べなかった肉を冷蔵庫で解凍しておいた。仕事終わりに、スーパーで待ち合わせた2人。「今日なに作るー?お肉解凍しておいたよ。」「え、天才!解凍しておいて〜って言おうと思ってた。天才」とのこと。
スーパーの野菜コーナーを通りながら、献立はすぐに「白だし鍋」に決まる。仕上げに「モッツァレラチーズ」を投入することも即決した。白だしとチーズの組み合わせ、想像より1.3倍ぐらい美味しくてびっくりする。
鍋の具材とモッツァレラを買ったあと、お酒売り場へ。50円引きのクーポンを持っていたのでマルエフを選んだら、セルフレジでなぜだか反応してくれない。「セルフレジではクーポンが使えないので、有人レジでお願いします」と言われた。
セルフレジで悪さをする人がいるからだろうか、と社会の不条理について考える。
帰り道、Mariが「今日はいつもと違う道で帰りたい」と言い出した。毎日同じ道だと、なんとなくつまらない気がするらしい。
違う道を歩いたところで、特に何かが変わるわけではない。それでも、知らない店の看板や、聞き慣れない生活音みたいな、小さな変化はある。
かと言って、次の日にはまたいつもの道に戻っているのだけれど。
家に着く頃には、手にしていた缶はもう空だった。
白だし鍋にモッツァレラを落として、あらためて乾杯をする。違う道の記憶は、もうほとんど残っていない。それくらいで、ちょうどいい。



