今日は家でパスタを作る日。ナスとトマトを買いに、スーパーで待ち合わせる。
最近、ふたりのセルフレジの連携がすごい。回を重ねるごとに、確実に上達している。
役割は決まっていて、Mariがピッ役、Koseが袋に入れる係。ライフのセルフレジは、けっこうなしっかりさんだ。計量台にちゃんと重さが乗らないと、次のピッをさせてくれない。つまり、ピッと袋詰めのテンポが合わないと、そこでレジが止まる。
Mariは、袋に詰めやすい順番を考えながら手を動かす。Koseは渡されたものを袋にきれいに収めていき、帰りのワン缶用のビールだけは袋に入れず、棚の上へポンと置く。
なんだこの連携。めちゃくちゃスムーズではないか。
この感じ、なんだか知っている。思い出したのは、ふたりで仕事の撮影をしていた頃のことだった。

Mariは半年前に会社を辞めて、いまはフリーランス。同じインテリア会社の撮影チームにいたものの、Koseと実際に組んで仕事をした期間は、そう長くない。ふたりで撮った商品は、5つくらい。Koseがカメラマン兼アシスタントで、Mariがスタイリスト。
あの頃も、妙に仕事がしやすかった。今日のこれは、たぶんあの頃のあれだ。
たとえば、食器の撮影。お互い、ほかのメンバーとはキッチンや料理を使う撮影をしたことがあったけれど、Koseと組んでの料理撮影はそのときが初めてだった。
料理撮影の現場は、だいたいめちゃくちゃになる。作りながら、盛り付けながら、撮る。カメラに映らないところは、もうごっちゃごちゃだ。
綺麗好きのMariは、正直その現場があまり好きではなかった。片付けても片付けても、誰かが散らかしていく。あの頃の鬱屈とした気分まで、するすると思い出してしまった。

Koseとの撮影は、ふたりきり。かなりのカット数をふたりだけで回すのは大変だな、と最初は思っていた。
ところがKoseは、Mariが盛り付けるそばから「お〜いいですね、美味しそう!」とちゃんと合いの手を入れてくれる。Mariはといえば、盛り付けながら、出したものはしまい、全部を定位置にリセットしながら進めていた。
すると、Koseが目をうるうるさせて言った。
「まって〜Mariさん最高です。めっちゃ片付けながらやってくださる…うれしい…」
アシスタントとして、みんなが散らかした山をひとりで片付けてきたKoseだ。あれは本気でうるうるしていたんだな、と思う。
まさかセルフレジで、走馬灯を見るとは。相性って、案外こういうところに出る。
いまはもう、撮影も、散らかった現場もない。ナスとトマトをカゴに入れて、のんびり歩いて帰るだけ。片付けるものといえば、せいぜい空き缶くらい。そんなゆるい日常が尊いなと思う。
家に着く頃には、缶はもう空だった。今日のパスタは、ナスとトマトのアラビアータ。



